「交番、開いてないのか?」


「・・・・・・あの」


「パトロールにでも出かけてんだろ」


「はぁ」


「で、なんの用?」


あ、そうだった。

男の眼力に押されていた私は、右手に持っていた財布を男の目の前に見せた。


「これ、落とし物です」


男は、メガネを人差し指で直しながら、

「財布か」

とつぶやくように言った。


「あっちにあるベンチに・・・・・・」


「預かろう」


「は?」


「よこせ」


右手を伸ばして財布をつかもうとする男をかわして、私は手をひっこめた。


「いやです」


いぶかしげに男が私を見た。

いや、にらんでいるように見える。

ていうか、絶対にらんでいる。