「そう?」


短く答える。

口を開くと、イヤなことばかり言っちゃいそうで。

しばし無言。


「江梨子になにかあったの?」


こんな時間に来るなんて、きっと大変なことがあったのだろう。

イヤな予感をおしとどめるように、なんでもないような口調で聞く。


「いや。そっちは捜査中」


「・・・そう」


そしてまた、沈黙。

なぜかわからないけど、結城の表情がなにか困っているかのように見える。

やたらメガネを指で持ちあげたり、ほほをかいたりしている。


・・・両親に結婚の許しをもらいにきた彼氏みたい。


そんなことを思わず考え、表情がゆるみそうになる自分を戒める。

結城が苦手な理由がわかった。

感情が揺さぶられるからだ。


恋、なんかじゃない。


むしろ、苦手なんだから。