違う、違う、違う。

私の理想とは違いすぎるし。


でも・・・・・・。


言葉のかわりにこぼれたため息に悲しくなる。


___この気持ちはなんだろう


そんな私の表情を見てか、よしこちゃんは優しくほほえんだ。


「こんな言葉もあるの。“忘れたい、という願いほど、強く記憶に働きかけ、その願いは叶わない”」


「・・・・・・」


「ミシェルド・モンテーニュの言葉ね。無理に自分の感情を否定しなくてもいいのよ。逆にそれに捕らわれて身動きがとれなくなるから。自然のままの琴葉ちゃんでいいの」


いろんな感情が頭にうずまいて整理できない。

私の自然な状態が、どんなのかすらわからないのだから。

その時、ポケットに入れていた携帯がふるえた。

見ると、知らない番号からの着信。

知らない番号には出ない主義だし、なにか売りつけられたりすることもあることらしいからポケットに戻すことにした。

すぐに、また着信を知らせてふるえる携帯。


「誰だろう?」


隣のよしこちゃんを見るが、もう自分のネイルを熱心にながめている。