「あれ?」

ガチャガチャ引っ張ってみるが、鍵がかかっているようだ。


「もう!」


せっかく持ってきたのに、留守?

なにか事件があったらどうすんのよ。

それより、時間。

ヤバいよ、早く帰らなくちゃいけないのに・・・・・・。

ガラス越しに誰かいないのか、のぞきこんでいると、

「おい」

と、後ろから声がかかった。

自分に言われたとは思わず、せまい交番の中をじーっと見ていると、

「おい、そこの学生」

肩をつかまれる。


「ひゃ」


驚いて振り向いた私の前に立っていたのは、スーツを着た男性。


「お前、なにしてんだ?」


「あ・・・・・・」


驚きのあまり声を出せない私は、口をぽかんと開けて男を見た。

20代半ばくらいのスラッとした男。

紺のスーツに、黒いメガネをかけている。


目つきが鋭く、私をじっと見ている。