だけど、よしこちゃんは気にもしてないふうにグラスをあおいだ。


「きっと、なにかしらの目的があって誘拐していると思うの。殺したりはしないんじゃないかしら」


「ちょ、縁起でもないこと言わないでよ」


今まさに飲もうとしていたグラスを取りあげ、私は抗議した。

よしこちゃんは、肩をすくめて奪いかえすと、

「ねぇ、琴葉ちゃん」

そう言って、冷えたグラスを私のほほに押し当てた。


「ひゃ、なになに?」


冷たさに目が見開く。


「アタシも“女”をやって長いからわかるんだけどね。琴葉ちゃん、結城刑事に惹かれているでしょう?」


よしこちゃんは、ニヤリと笑った。


「な、なに言ってるの!?」


「やっぱ、図星かぁ」


よしこちゃんはおいしそうにグラスの液体をのどに流しこんだ。


「やめてよ。なんであんなやつ」


冗談じゃない。

あんな冷たくてエラそうで、人の気持ちなんてこれっぽちも考えないあの男に、惹かれるわけがない。