2、

「へぇー。映画みたいな話ねぇ」


寮を入ってすぐに置いてあるソファで、私はよしこちゃんに話を聞いてもらっていた。

右手に持ったグラスをカランと揺らしたよしこちゃんが目を丸くした。

焼酎、というお酒が好きなよしこちゃんは、毎晩これを飲んでいる。

飲みすぎると大声で歌い出すのがたまにキズだけど。

友季子は、橘とまた部屋で長電話をしているらしい。


「どうすればいいのかな」


私はぼんやりと壁にかかった絵をながめた。

「そうねぇ・・・・・・。“3人でも秘密は守れる。ふたりが死んでいれば”って状況ね」


よしこちゃんはそう言ってグラスをあおる。

カランと氷が響いた。


「なにそれ?」


「ベンジャミン・フランクリンの言葉よ。つまり、小太りのヒゲが死んだのは、秘密を守るため。自殺かもしれないし、他殺かもしれない」


「3人って?」


よしこちゃんの横顔を見つめた。


「例えよ、例え。お金を受け取っていた小太りのヒゲは死んだ。小太りのヒゲは、依頼をされて女子高生を誘拐していたんだと思うの。で、お金を渡していたのは、おそらくその誘拐を依頼した人間」