結城を見ると、まっすぐに私を見てだまってうなずいた。

彼の右手が私の頭に乗せられる。


「えらいぞ」


そう言いながら、ポンポンと軽く叩いた。

江梨子のことを思うと、胸が張り裂けそう。


すぐ近くにいたのに・・・・・・。


なにも気づかずに、私はぼんやりと財布を見ていたなんて。

「俺たちは、松下江梨子が誘拐されたとみて捜査をしていた。そんなとき、あの日クラブで受け渡しがあるという情報をキャッチしたんだ」

顔をあげる。

そうだ。

あの小太りのヒゲ!


「ねぇ、あの男が犯人だったんでしょう? だから逮捕したんでしょう!?」


「いや」


結城は首を横にふる。


「金をもらっていた男は、誘拐の協力者だと思われる。でも、もうそれもわからない」


「わからないって、どういうこと?」


「ヤツは、留置所で隠し持っていた毒薬を飲んだんだ。・・・・・・死んだよ」