「私が、私がっ」


瞬間、目の前が真っ暗になった。

ああ、あのスーツの匂い。

気づくと、結城が私を抱きしめていた。

強い力が背中に加わる。


「どうしようもなかったんだ」


厚い胸に顔を押しつけられ、低い声が耳に届く。


「うう」


「琴葉、大丈夫だ。しっかりしろ」


「うえ・・・・・・」


「それが、松下江梨子を救う糸口になるかもしれない」


その言葉にハッとする。

・・・そうだ、まだ江梨子を助けられるかもしれない。

スーツから顔を離して、私は鼻をすすった。


「ほら」


結城がハンカチを出して渡してくれる。


「・・・・・・」


素直に受け取り、涙をぬぐった。



・・・私が、私が江梨子を助けるんだ。