静かに彼はうなずく。


「少しのお時間、お話を聞かせてください。許可はとってありますから」


悠香の言葉がよみがえる。

江梨子の家にパトカーが停まっていたって・・・・・・。

風邪じゃないの?


まさか・・・・・・。


「・・・わかりました。行きます」


そう短く言うと、私は廊下を歩き出した。


キュッキュッという音が響いて、悪い予感が胸を満たした。




会議室の前には、担任の山本先生が立っていた。

中年太りできつそうなズボンの上にお腹が乗っている。


「石田、大丈夫か?」


「・・・はい」


会議室のドアを見つめる。

この中に、結城がいる、と思うと逃げ出したくなる。

話をしたくないのは、早く忘れてしまいたいから。


でも、今は江梨子のことが先だ。