行けないよ、と首をふると、友季子はわざと泣いてるような顔をして、顔をひっこめた。


「なにやってのよ、もう」


机の中から英語のテキストを取り出し、何度目かのため息をついた。


「ねぇ、あれだあれ?」


悠香が私に聞く。


「え?」


顔をあげると、そこには、

「橘さん!」

橘刑事が顔をのぞかせてこっちを見ているではないか。

うしろで友季子も顔を出して、また手をふってる。

教室がざわつき出す。

なんで橘刑事までここにいるの!?

パニックになりながらも急いで教室から出ると、そこには橘と友季子がにこにこと笑って立っていた。

うしろ手に扉を閉める。


「ちょ、なにやってるんですか!?」


「えとね」


友季子が橘を見て笑いながら言う。


「電話で話してたら、ちょうど橘さんたちがこっちに向かってるとこだったの」