「ええっ! それ、ほんと?」


「夢の中でじゃねーの?」

浩太はムシすることにして、私は悠香に顔を寄せた。


「でもさ、それが複雑な事情でね。恋人でもなんでもないの。恋人のフリをさせられてね」


あのときの、結城の息づかい。

メガネ越しの目。

抱きしめられた感覚。

それらをこの数日、何度思い出しただろう・・・・・・。


思い出すたびに、心臓が鼓動を強めている。


あの暗い空間での時間が、記憶だけじゃなくて身体にも残っている。

でもそれは、警察署での私の暴走の記憶につながってゆくわけで・・・・・・。


そしてまた、ため息。


「なんだかよくわからないけど、それって危なくない?」


悠香が声をひそめて言う。


「危ない?」


「うん。ほら、最近変な事件はやってるでしょう?」


「ああ、そうだね・・・・・・」



この一か月、高校生が行方不明になる事件が、この市内で3件起きている。