結城の肩に顔を押しつけた。

はたから見れば、恋人同士のイチャイチャに見えるだろう。


・・・いい匂い。


結城のスーツの匂いに目を閉じそうになって、私はあわてて顔をあげる。


「あ・・・・・・」


今、まさに小太りのヒゲが何か封筒のようなものを受け取ったところだった。

一瞬のことだったので、しっかり見ていないとわからない。

渡した方は、すぐに立ち去ってしまったのでその顔は見えなかった。


「受け取った、いま受け取ったよ!」


「よし!」


結城はバッと私から離れると、小太りの男めがけて驚くほどの速さで近づく。

男が結城の姿を視界でとらえた時には、すでに結城はすぐそばまで近づいていた。

短い叫び声をあげて、逃げようとした男の足を払う結城。

一瞬、宙に浮いた男が床に叩きつけられた。

胸元からこぼれた封筒が床に落ち、札束らしきものが飛び出る。


「ひぃ!」


あわてて立ちあがろうとする男の肩を、結城は右足で思いっきり踏みつけた。