驚いて体をすくめた私のすぐ目の前に、結城の顔がある。

メガネ越しの目がまっすぐに私を見ている。


目が離せない。


音楽も聞こえないくらい。

私は結城を見つめかえすしかできない。

重低音の音がかすかに聞こえたけど、もしかしたら私の胸の音なのかも。


「今から顔をどけるから、客の顔を観察してくれ」


「え?」


「時間がない。たのむ」


そう言うと、結城は顔を横にずらしながら私にもたれかかるようにした。


そして・・・・・・私を抱きしめた。


「うわ・・・・・・」


「琴葉、集中」


そんなこと言われたって、今にも倒れそうなくらいなのに。


なに、この人?


なに、私?


はんぱなく胸がドキドキしてる。


聞こえちゃうよぉ。