不思議。

結城がここにいるような気がしていたかのように、心は落ち着いている。


「ああ。荷物を取りに来た」


結城の足元には、まとめられた寝袋やトランクがある。

そっか・・・・・・。


「捜査は終わりだもんね。これで同棲も解消ってわけだね」


ことさら明るく言う私。

まるで自分じゃないみたい。

いつか、こうしてさよならをする日が来るのはわかっていた。

だからつらくなんかない。

悲しくない。


「いろいろ悪かったな。お前をたくさん危険な目にあわせてしまった」


眼鏡の奥のその瞳を見つめることができず、私はうなずいた。

いろいろ、ってひと言では言い表せないくらいの出来事たち。


「実家にもお見舞いに行けなくて、すまなかった」


「大丈夫だよ。私こそ助けてもらって感謝してるよ。あのまま売り飛ばされるはずだったんだから」


そこまで言ってからふと、気になった。


「ねぇ、どうしてあの地下に私がいることがわかったの? よしこちゃんの後をつけてたの?」