「友季子、これを言ったらもっと苦しめちゃうかもしれないけど聞いて」


「え?」


「友季子が撃たれたとき・・・・・・ね、あのときの橘さんは本気で動揺していた。何度も何度も友季子の名前を呼んでいたんだよ」


きょとんとしたその表情から、友季子の真意は読み取れない。

だけど、私は見た。

そして感じたから。


「橘さんは友季子を本気で好きだったと思う。ひょっとして友季子を撃ってしまってから、それに気づいたのかもしれない。だけど、あの動揺は本当の感情だと思う。少なくとも私はそう信じてる」


「・・・ほんとうに?」


「琴葉ちゃんが言ったことは、本当のことよ。ウソじゃない。いつもウソの仮面をかぶっていた橘さんが、はじめて本当の表情をしていたもの」


よしこちゃんがうなずくと、友季子の目に光る粒が生まれた。

どんどん大きくなり輝きを増す。

そして、ポロポロとこぼれ落ちた。


「そっかぁ。そうだったんだね・・・・・・」



声をあげるでもなく、友季子は何度もくりかえしそう言いながら涙を流し続けていた。