「橘、もうあきらめろ」


そう言った結城の後ろには、銃を構えた人の姿が見えた。

何人もいる。

ああ、結城が助けに来てくれたんだ。

うれしくて涙があふれた。

大好きな人が目の前にいる。


「離れろ。でないと、こいつを撃つ」


橘の声はこんな状況の中にいても、まだ笑っていた。


「・・・・・・」


「俺は本気だ。離れろ」


こんな状況なのにいやに落ち着いた橘は、私のほほに銃口を押しあてた。

ひんやりとした鉄の感触。

少し頭がボーッとしてくるのは、恐怖からの現実逃避からなのか、薬がまわってきたからなのか。

どんどん体から力が抜けてゆくみたい。


「そんなことしてどうなるんだ。もう逃げられないぞ」


まっすぐに銃口を橘の顔あたりに向けて結城は低い声で言った。


「逃げられなくてもいい。お前には前からムカついてたんだ」


「そうか」