良かった。

これ以上、橘の本性を聞かせたくないから。


「さ、そういうことだから、これからお前らには眠ってもらう」


橘がさっき置いた夕食のトレーからコップに入った水を取ると、悠香、そして私の前に置いた。


「すぐに眠れるさ。目が覚めたらそこは日本の外。新しい人生を楽しんでくれ」


よしこちゃんが顔をあげると、痛みに顔をしかめながら、

「あなた、絶対に捕まるわよ」

と、言った。


「捕まるなら最初からするかよ。俺は日本に残って捜査をしているフリをするし、お前らは荷物として海外に送られる。向こうの港で仲間が待っているよ。『ノーリスク・ハイリターン』ってわけ」


「じゃあアタシを殺しなさいよ」


「そんなことしなくても、ここであと1日ももがいていれば、出血多量で死ねるから安心しな。さ、飲め!」


橘が私の髪を引っ張り、顔をあげさせる。

悲鳴が思わず出た。

コップを口に持ってこられる。

絶対飲むもんか!


顔をそらせると、橘はさらに髪を強く引っ張った。