攻防を眺めていた隣の男性が、結城の肩をつかむと後ろにひく。


「突然すみません。僕は、橘と言います」


前に出た男が、私にではなく友季子に名刺を差し出した。

おだやかな声で、笑顔まで見せている。


「はい・・・・・・」


「結城の同僚で、同じく刑事をやっています」


「はい・・・・・・」


あ・・・・・・マズい。

友季子がぽわーんとなっている・・・・・・。

こういう顔つきになるときは、ほんとヤバいんだよね。

橘は、髪をかきあげながら、

「君の名前、教えてくれるかな?」

と、友季子の手を握った。


「私、小野友季子・・・・・・です」


「友季子さん。いい名前だね。今から少し時間ありますか?」


あくまで紳士的に橘が言う。

このままではヤバい。

私は友季子に向かって口を開いた。


「あんまり時間ないよね。帰らなきゃ、だよね?」