「いいんだよ。こんなときだから、本当に会いたい人がわかるんじゃん」


「・・・うん」


こくりとうなずく悠香は、さっきまでの気丈さとはちがい今にも泣きそうな顔になっている。

恋は、心を揺さぶって不安にさせる。


「私もきょうちゃんに会いたい」


友季子が橘の名前を出すと、悠香が、

「きょうちゃん?」

と、聞き返した。


「うん!」

元気よく答えると、友季子は、

「きょうちゃんは、京都生まれなんだって。だから、『京』の字を使ってるらしいよ」

と、どうでもいいことを説明し出した。


「友季子、わかったから」


「京都の『京』に、歴史の『史』。いい名前でしょー」


「はいはい」


そう答えながら起こして壁にもたれた。

ふたりとちがって、手が壁に当たるとそれはそれで痛い。

この体制はムリだな。

またごろんと横になった。


「琴葉、イモムシみたい」


キャッキャッと笑う友季子に一瞬イラッとしたけれど、逆に考えれば深刻になりすぎるのもイヤだし。