息を吸って勢いをつけると、そのままドアに向かって走った。


ドンッ


なにかにぶつかり、体制がくずれたけれど相手も同じなはず。

狭い部屋のドアまでの距離がこんなに長いなんて!

ようやくドアにつくとノブに手をかけようと伸ばす。

しかし、次の瞬間、強い力が私の体を引っ張った。

そのまま手で口を押えられる。


「んんんんんっ!」


もがいて声をあげるけれど、そのまま鼻をもふさがれた。

ツン、とした薬品の匂いが意識を遠ざける。

さっきまで感じてなかった恐怖という化け物が形になって私をとらえた。

息が、息ができない。


苦しい。


苦しいよ。


薄れゆく意識のなか、結城の顔が浮かんだ。


助けて、結城さん・・・・・・。




声にならない声は宙に溶け、やがて目の前がまっくらになった。