「落とした人は現れましたか?」


「それがねぇ。中に入ってた学生証から、自宅に連絡を入れたんだけど、留守みたいでね。でも、そのうちに取りにくると思うよ」


へぇ・・・・・・、学生さんだったのか。

確かにあの財布は真っ赤で、若い人が持ってそうなデザインだったけど。


「わかりました」


その場にいる理由もなくなり、帰ろうかとしたとき、

「あっ」

突然、警官が声をあげた。


「え?」


「ほら」


警官が指さす方を見ると、通りの向こうからふたりの男性が足早にこっちに向かってきているところだった。


そのうちの、1人は・・・・・・。


「また会ったな」



___結城だった。



昨日とは違う黒いスーツを着ている。

眼鏡のデザインも少し違う、ってことを一瞬で判別している自分に驚いた。


けっこう、オシャレなのかも。