「友季子にいつも言われてますから。『よしこちゃんは誰よりも女性らしい』って」


だけど、私は笑うことなんてできない。

何度も朝の会話を思い出しては、後悔たちが息を吸えなくして苦しめる。

橘が警察署に戻り、よしこちゃんに促されて階段をまたおりていると、

「琴葉」

低い声が私の名を呼んだ。


階段の下にいたのは、結城。

困ったような顔で私を見ている。

そして、その横にはひとりの女性が立っていた。


すぐにわかった。


以前、街灯のスポットライトの中で結城に抱きつくようにして泣いていた女性だ。

不思議そうに私を見ている彼女と目が合う。

けれど、今の私にとってはどうでもいいこと。

結城の声には答えずに階段を降りきると、歩道を寮に向かって歩き出す。

よしこちゃんも戸惑っているようで、

「あら」

とかつぶやいているけれど、足は止めなかった。