全速力で走ったかのように、まだ胸は内側から叩いているように鼓動を速くしている。


『それより、琴葉。聞いてもらいたい話がある』


いつもの結城らしくない、少しためらったような言い方だった。

言おうか言うまいか悩んでいるような。


「うん」


それから、またたっぷり間をとったあと、結城の声が聞こえた。


『あのな・・・・・・。小野友季子を信用しないほうがいい』


思考が真っ白になるってこういうことだろう。

言われた意味を考えようとしても、私には聞きまちがいとしか思えなかった。


「ごめ・・・・・・。今、なんて」


『小野友季子を信用しないほうがいい』


一字一句同じ言葉。

そして、また沈黙。


「・・・それって、友季子のこと?」


『ああ。詳しくは話せないが、容疑者のひとりであることは間違いない。あまり深入りせずに、少し距離を置いてほしい』


「・・・・・・」


頭がシーンと澄み渡るような静けさ。