で、結城はやさしく言うの。

『あいつは命を狙われてるんだ。俺だってお前のそばがいいよ。でも、仕方ないんだ』

とかなんとか。

彼女は涙を拭いて、

『でも、同じ部屋で寝ることないじゃない。なにかの間違いがあったらどうするのよ』

と、さらに抗議する。

結城はあのバカにしたような笑い方をする。


『あいつと? ありえないだろ。天地がひっくり返ってもありえない』


『ほんとに?』


『ああ、俺が好きなのはお前だけだよ』


『うれしいっ』


それで、街灯の下で抱き合うふたり。

ムカムカする。


「他でやれ、ってのよ!」

膝に抱えた枕をボフッと叩くと、

「なにが?」

と、すぐそばで声が聞こえた。


「げ」


結城が立っていた。

静かにドアを閉めると、結城は私には目もくれずに寝袋を広げた。