その女性が手のひらで自分のほほをなでたかと思うと、パッと方向を変えて駆けて行った。

結城が一瞬迷った表情を見せる。

そしてそのまま、

「待てよ」

と、短く言うと女性を追って走り出した。

夜の暗闇の中、すぐにその姿は見えなくなる。

私たちはその場から動けなかった。


「・・・・・・大丈夫、琴葉?」


いつの間にか隣には友季子がいた。


「あ、うん」


「さ、入りましょ。門限は過ぎてるわよ」


やけに明るく宣言したよしこちゃんがさっさと中に入ってゆく。


「琴葉、行こうか」


友季子の声に私もようやく呪縛がとけたかのように歩き出す。