「うう、琴葉ちゃあん」


「琴葉」


よしこちゃんの肩越しに立っているのは、友季子。

悲しそうな笑顔で私を見ている。


「友季子まで来てくれたの? 心配かけてごめんね」


黙って友季子は首を横に振った。


「じゃあ、僕はこれで」


橘が言葉少なげに去ってゆく。

あれ?


「友季子、いいの?」


せっかくまた会えたのに。

友季子は肩をすくめると、

「なにが? さ、帰ろ」

と、ほほえんだ。


「う、うん」


たしかに人がひとり死んだのだから、そういう雰囲気でもないのだろう。

私はよしこちゃんの太い腕に肩を抱かれながら、夕暮れの道を寮へ戻る。

歩いているうちに、不思議と気持ちが落ち着いてくる。

ひとりで行動した自分が悔やまれる。



これからは気をつけないと。