「琴葉ちゃん!」


警察署を一歩出るころには、すっかり日が暮れていた。

その声が聞こえた次の瞬間、私の体は強い力で抱きしめられていた。


「ひゃ!」


「ごめんね、琴葉ちゃん」


そう言いながら体を離したその顔。

よしこちゃんだった。


「む、迎えに来てくれたの?」


そう言うと、涙もろいよしこちゃんはもう顔をゆがませている。


「だってぇ、アタシが余計なこと言っちゃったから、それであの寺田って人に会いに行ったんでしょう?」


「でも」


「アタシのバカ! なんでこんないたいけな子を危険な目にあわせちゃうのよ。バカバカ!」


ポカポカと、自分の大きな頭を叩くよしこちゃん。

うしろにいる橘は、よしこちゃんとは初対面なのだろう。

ひきつった顔で、呆然と私たちを見ていた。


「大丈夫だよ、よしこちゃん。心配ばっかかけてごめんね」