「うん」


そう言いながら、もう一度それをしっかりと見た。

ノブについているそれはまだ乾いていない。

ゾクリと背中に悪寒が走った。


「血・・・・・・血に見えるの。これ、血かもしれないの」


『琴葉』


「どうしよう。違うかもしれないけど、でも・・・・・・」


『琴葉!』


大きな声に思わずスマホを耳から遠ざけた。


「ちょっと! びっくりさせないでよ!」


思わず苦情を言うと、結城は、

『お前が落ち着かないからだ。それよりそこには他に誰かいるのか?』

と、冷静な声で言った。


「ううん。ひとり・・・・・・」


『バカ! お前、命狙われてんだぞ! ひとりで行動するな、って言っただろうが!』


さっきよりも大きな声で叱られる。

そうだった。

そのことを思いだしたとたん、また恐怖が足元からはいあがってきた。


『今、向かってる。すぐにつくから』