『はい』


その声に一気に体の緊張がほどけた。

ぶっきらぼうな声、それは結城だった。

この声をなぜか聞きたかった。

さっきまでの体全体の震えが少しおさまったよう。


「あ、あのっ」


『琴葉か?』


「あの、ねっ」


『・・・なにがあった? 琴葉、お前今どこにいるんだ?』


結城は私が普通じゃないことをすぐに察知したようで、真剣な声に変えた。


「あ、あのね。今、学校の屋上でね。寺田さんと待ち合わせしててね」


『屋上? 寺田?』


あ、そっか。

寺田のことは話してなかったんだっけ。


「寺田さんは、この間公園で会ったレポーターの人。屋上で待ち合わせしててね。なんで待ち合わせしたかって言うとね」


『琴葉、その情報は今はいい。それよりなにかあったんだろ? どうしたんだ?』


「えとね。屋上に寺田さんいなくてね。でも扉にね、なにかついてるの」


『なにか?』