「よしおさん・・・・・・」


「バカ。よしこちゃん、って呼びなさいよ。いいから屋上に行きなさい」


「でも、捜査の情報を教えないと」


「そんなの適当に言えばいいじゃない」


「え?」


驚く私に、よしこちゃんはニヤリと笑った。

いたずらを思いついた子供のような顔。


「適当に言えばいいのよ。そうねぇ・・・・・・『警察は空港を見張っている。明日あたり、荷物にまぎれこませて出国しようとしているらしい』とかなんとか」


「それ、ひどくない?」


「ひどくない。こちとら一刻を争う事態なのよ。どんな手段を使ってでも情報は手に入れなきゃ」


よしこちゃんが言うと、それが正しいことのように思えるから不思議。

そっか。

なにもバカ正直に言わなくてもいいか。

「そうと決まったら」

そう言うがいなや、よしこちゃんは再び私の手から買い物袋を奪った。


「さっさと着替えて学校に行くこと。急がないと、時間ないんだから」


あんなに重かった買い物袋を、余裕に軽々と持っている。


「うん」