「今日は化粧してないね」


黒いジャージに長い髪を帽子の中にしまっているよしこちゃんは、誰がみてもただのおじさん。

歩き出す私に、よしこちゃんも並ぶ。


「化粧したいわよぉ。でも、小さい町でしょう? みんな驚いた顔して逃げちゃうじゃない」


クスクスと笑うよしこちゃん。

姿がおじさんなだけ、違和感ありまくり。


「それより、かよわい女性にこんなの持たせないでよ。重いんだから」


両手にさげた買い物袋を強引にひとつ私に押しつけてきた。


「うわ!」


思った以上の重さにびっくり。

よしこちゃん、すごい力持ち・・・・・・。


「で、さっきの人は?」


興味ありまくりな顔でよしこちゃんは聞いてくる。


「それがね・・・・・・」


私は、これまでのことをよしこちゃんに話した。

誰かの意見を聞きたかったからかもしれない。

さっきの寺田の提案まで話し終えると、よしこちゃんは黙って、

「ふん・・・・・・」

と、鼻を鳴らした。