「少しでいいのよ。警察がどういう動きをしているのか? 誰をあやしいと思っているのか? そういうの、教えてほしいのよ」


悪びれずに笑うレポーターにどんどん胸のムカつきがふくれあがってくる。


「・・・なに言ってるんですか? なんで、あなたに協力しなきゃいけないんですか」


「あら、怖い言い方」


私の答えがわかっていたかのように、あくまで余裕な笑顔を崩さない。


「私、行きますから」


レポーターを押しのけて歩き出す私の背中に、声がかかった。


「すごい情報、私、持ってるんだけどな」


その声が魔法のようにすんなり頭に溶け、足が自然に止まった。

今言われた言葉を頭の中で繰り返していると、さらにレポーターは、

「これは警察にはまだ言ってない情報なの。一気に犯人に近づけると思うんだけどな」

と、まるで楽しい話をしているかのように言った。

その場から動こうとしない私に、レポーターが一歩近づく。


「琴葉さんにだったら、その情報教えてもいいんだけどな」


「・・・警察に教えればいいじゃないですか」


「そう?」


「そうですよ。私なんかに言うよりも、警察に言ったほうが捜査が進みますから」


そう言うと、レポーターは鼻から息を吐いた。


「あなた、報道ってのをわかってないのね。警察に言ったら終わりじゃないの」