走ったあとのように息が荒くなっていた。


「さ、帰るか」


その声に、結城を見る。


「うん」



___帰る



言葉があたたかく胸に響いた。

こんな状況なのに、いや、こんな状況だからこそ、結城の存在を心強く感じる。



寮につくと、まだよしこちゃんは帰ってきてなかった。

結城は、よしこちゃんがいつも座るソファに腰かけた。

食堂でグラスに水を入れて渡すと、

「ん」

と受け取る。


「ほら」

と、ポンポンとソファを叩くので、なんでもないような顔で隣に座った。

しばし、無言。


「宮崎悠香とは親しいのか?」


「うん」


「そっか」


鼻から息を吐きながら結城はつぶやくように言った。