おかしい、おかしい、と呟きながら、壁にはりついたあなたの頬を指先でなぞる。



絵の具のついた指は完全に乾ききっていて、乾燥した赤い絵の具がぽろぽろとこぼれ落ちた。


こんなに待ったのに、あなたは私に会いに来てくれない。



ということは、この魔法の使い方は間違っていたにちがいない。


私は絶望の吐息をはきだした。



また他のやり方を考えなければならない。


小瓶に残った魔法の粉は、絵の具に混ぜたせいで、あと半分ほどになってしまっていた。



これからはもう、無駄なことはできない。


どうすればあなたに会える?



考えたすえ、窓際のローテーブルに置いてあった観葉植物の鉢に粉を撒いてみた。


そうすればあなたの花が咲くかもしれない、そう思ったのだ。


でも、何日待ってもだめだった。



ぼんやりと窓際で待ち続ける私を、壁の中のあなたがじっと静かに見ていた。


ばかだね君は相変わらず、と呆れたように笑みを浮かべている気がした。


だって魔法の使い方なんて分からないんだもの、と私は溜め息をもらした。