すべての色を床の上に落とし終えたら、つぎは色を混ぜ合わせていく。


筆がないから指を使って。


黄緑、ピンク、黄土色、ダークブラウン、はだ色。

どんどん色が増えていく。



あなたが座っていた床のパレットの上で、あなたに何度も触れた指の筆が、魔法の絵の具を混ぜ合わせていく。


そこに、魔法の粉をぱらぱらとふりかける。


ああ、これならきっと、あなたに会える魔法が使える。



私の指は、魔法の絵の具と魔法の粉をまとい、どろどろに凝り固まった。


これでは絵を描けないので、手を洗おうとキッチンに入る。


でも、たいせつな魔法の粉を洗い流してしまうことなどできなくて、濡らしたふきんで拭くだけにした。


そのふきんは洗わずにていねいにたたみ、冷蔵庫の中にしまう。



爪の間や指紋の隙間に絵の具がつまっていたけど、これくらいなら問題はない。



私はリビングにもどり、肌色の絵の具を指ですくった。



さあ、この絵の具で描こう。

大好きなあなたの絵を。


そうすればあなたは私に会いに来てくれるでしょう?



でも、画用紙もスケッチブックもない。


何に絵を描こうかと考えて、部屋を見回して、白い壁紙に目がとまった。