細く開いた窓の隙間から、やわらかい春風が部屋に吹き込んでくる。


薄い水色のレースカーテンが風をはらんでふわりと膨らみ、ゆらゆらと揺れていた。



生ぬるい風は薄暗い部屋を一周して、私が身体をうずめているソファにやってくる。


手のひらにのせていた白い粉が、ふわっと風に舞いあがった。



私はあわてて手をとじる。


床に落ちた粒を撫でるようにして、ひとつ残らず集める。



手のひらにざらりと砂のような感触があった。



気だるい身体にむちうって立ち上がり、窓を閉める。


それから再び手を開き、白い粉をじいっと見つめる。



―――これは、魔法の粉。


たいせつな、たいせつな、魔法の粉。



ひとにとってはただのごみかもしれないけれど、私にとってはかけがえのないもの。


私の望みを叶えてくれる特別な魔法の粉なのだ。



だから、たったの一粒でさえ、無駄になんかできない。