「はい、僕も使わせてもらってたで、好きにしていいで」
「ごめん、ありがと」
わかりやすいところに形跡を残しているわけがないと確信があったので、ブラウザを開いてURLを直打ちした。
見慣れたBBSにたどり着いてから『書き込む』メニューを選択する。
やっぱりだ。
投稿者の欄に、名前が残っている。
"サンクスノベルズ管理人"
震える手で、ブラウザを閉じた。
ちくちくと、刺すようだった頭痛が、急に締めあげるように激しくなり、思わず両手で頭を抱えた。
「あっちゃん!」
うずくまった私に、林太郎が駆け寄る気配がする。
頭が割れそうに痛んだ。
テン、これは偶然?
単に、私の本当の父親の死を見せようとしただけ?
それともあんたは、ノベルのことも全部知っていて、私をここにつれてきたの。
なぜ?
これは知りたくなかった。
これだけは、知りたくなかったよ。
部屋のドアが遠慮がちにノックされた。
「林太郎?」
「なんでわかるん」
予想どおり、驚いた顔がのぞく。
林太郎はベッドのそばまでやってくると、再び寝込んだ私のおでこに、ひんやりした手を乗せた。
「熱、高いが、あんな無理したらあかんて」
「手が冷たいね」
「下でおばさん手伝ってたんや、洗い物」
私の仕事だ。
「ごめん」
「病人が何言ってるんやし、手はもうええの?」
「正直、けっこう痛い」