その時、あれーっと男の子の声がした。



「永田さん?」

「えっ、あっ」



きゃっとかやっとか、智弥子が小さく悲鳴をあげたので、何かと思ったら、私までわっと声をあげるはめになった。



「林太郎」



あっちゃんやー、と顔をほころばせる林太郎は、同じようにすらっとした男の子と一緒だ。

智弥子の様子を見るに、さては彼が件の。





「遠藤(えんどう)です」



人もまばらなファーストフード店で、斜め向かいに座った彼は爽やかに名乗った。

やっぱり智弥子の好きな子で、林太郎のクラスメイトの、あの子だ。



「へえ、江竜さんも弥栄の幼なじみなんだ、いいなあそういうの」

「遠藤くんちは、転勤族なんだよね」

「え、俺そんな話、した?」



したよー、と笑いあうふたりは仲よさそうで、まだ他人行儀なのが、こっちが恥ずかしくなる感じで、可愛い。

キャッキャッていう音が、見えそう。

似た感想を抱いたらしく、林太郎が向かいから、楽しげな目線を送ってきた。


あっさりした顔立ちの林太郎と対照的に、遠藤くんはしっかり日焼けして、くっきりした目鼻立ちが特徴的だ。

はきはき喋って、いかにも快活で、リーダーシップなんかもあって、信頼されてるんだろうなって感じ。



「のぉ、いい奴やろ」

「うん、智弥子の好みがわかった気がする」

「遠藤は、好みとか関係なしに、みんな好きになるんやって、ほんと女の子に人気あるんやよ」

「そう言う林太郎は?」



急に智弥子に振られて、僕? と林太郎が目を丸くした。

うーんと記憶を探るように首をかしげる。



「遠藤に渡してって、手紙もらったことなら、あるで」

「渡したの?」

「可愛い子やったから、腹立って捨てつんた」