「トワが消えちゃったのも、摂理ですか」

「俺にはすべてはわからないが、その可能性はある」

「トワは、かなり長い間、村長を担当していたことになりますよね、そういうことってあるんですか」



サンクスノベルズが始まったのは、数か月前だ。

少なくともその頃から村長は、トワと知りあっていたのだ。

村の誰も知らないところで患っていた彼に、余命宣告をしたのは、お医者さまとトワと、どちらが先だったのか。



「まれにだが、ある」

「どういう基準で」

「どこの世界にも、特別扱いされる顧客というものはいる」



伸二さんが人差し指を立てて、口の端を上げた。



「VIPと、クレーマーだ」



はは、なるほど。

面倒そうな人には、特別対応するのか。


トワのように、死神が消えてしまう事態というのは、どんな時なんだろう。

そう尋ねようとしたら、伸二さんが窓の外に気を取られた。



「シンデモムリ、が来るぞ」

「は?」



間もなく、玄関の戸が叩かれ、応答する前に誰かが飛びこんできた。



「あっちゃん!」

「林太郎!?」



玄関先で息を切らして、なんでこんな暗いん、と不審そうに見回す。



「いいでしょ別に、何よ」

「一緒に病院行こ、今大町さんから連絡あってな、お父さんのところに、おばさん、来たんやって」

「お母さんが?」



そういえばこの時間まで、帰ってきていない。

ついに突撃しちゃったか、という驚きの中、林太郎の気がかりそうな顔つきが気になった。



「何か、あったの」

「だいぶ暴れたんやって、おばさん、病院の人が落ち着かせてくれて、今、別の部屋で治療受けてる」