「愛してる」



彼が一言、彼女の耳元で囁けば。



「ありがとう」



掠れた声で、彼女がそう返すのだ。



お互いにとって虚しい行為だと知っていながら、わかりきっていながらも。



それぞれの心の穴を、ただ必死に埋めるためだけに、偽りに愛し合って。



そして、最後は。



彼も彼女も、無機質な部屋の天井へと、
ため息をこぼすのだ。