あたしはそれでも


『普通』に生きていた


何も変えられない

情けないあたし



ある日


窓際の席で

英語の授業を受けながら


あたしは突然

動けなくなった



板書を写していた手が

急に動きを止めて


全身が

自分の身体じゃないみたいに

動かせなくなった



淡々と進んでいく授業


流れるような先生の声


黒板とノートを交互に見て

無心に手を動かすクラスメイト


後ろからだと

誰が誰だか

見分けもつかない




あたしも

おんなじだ



そう思った瞬間


苦しくて

苦しくて


どうしようもなくなった




あたしは

するりと教室を抜け出して


はじめて

校舎の屋上に行った



重い鉄のドアを開いた瞬間


光が溢れた

風に包まれた



どこかで鳴く鳥の声

遠くの国道を走る車の音