言うだけ言うと


児島は満足げに息を吐いて

すたすたと歩きはじめた


あたしは慌ててその猫背を追う



児島は何事もなかったかのように

まわりをきょろきょろ見ながら

ゆっくりと歩いていた



駅の無料駐輪場の横を通りすぎたとき


金髪を逆立てた若い男が

ぼろぼろの自転車をとめるのを

たまたま見つけた


乱暴で粗雑なしぐさが気になり

あたしはそちらに目を向けた



次の瞬間


男の腕が隣の自転車にぶつかり

倒れた自転車がまた隣の自転車にぶつかり


数えきれないほどの自転車が

つぎつぎに将棋倒しになった


けたたましい音に

みんなが振り向く



でも男は

いまいましげに一瞥したあと

そのまま駅のほうに立ち去ろうとした