児島はやっぱりにやにやしながら

あたしに近づいてきて


にやにやしながら言った



―――なになに

おまえ、死ぬの?



あたしは手すりに屈みこんだまま

動けない



児島があたしのすぐ隣に立った


あたしは思わず身構える


ほっといてよ、と言う

準備をしていた


それなのに



―――俺、ひと死ぬのとか

見たことねえんだよな

貴重な経験だわー



児島は心から嬉しそうだ



あたしはぽかんとして

児島を見つめ返す



―――なに

まだ飛び降りねえの?

あ、俺のことは気にしなくていいから

どうぞどうぞ



児島は真顔だった



あたしはやっぱり動けない

何も言えない



そんな自分が情けなくて

無理やり口を開く



―――べつに

そんなつもりないし

なに勘違いしてんの