――――ワアァァッ!!



突然、歓声が爆発した。


私の目は、一点に釘付けになる。


ステージの端から、ゆったりとした足どりで出てくる、背の高い細身の男。


長い髪をゆらゆらと揺らしながら猫背ぎみに歩き、右手にはギターのネックを鷲掴みにしている。



「うおおっ!!」


「きゃああっ!!」



拍手と喝采に全身を包まれた男が、ステージの中央に立った。



と同時に、強烈なスポットライトがその姿を照らし出す。



暗闇を貫く、鮮やかな白い閃光。


そのなかに浮かび上がる、ほっそりとしたシルエット。



光沢のある白の大きめのシャツを三番目のボタンまで外して、黒い細身のジーンズをはいている。

たったそれだけのシンプルな服なのに、信じられないほどの輝きを放っていた。




「リヒトーーーッ!!」




泣きたいくらいの震えがくる。


千人近くの視線と歓声を一身に受けるリヒトの姿。



数年前には考えられなかった。


でも、リヒトはとうとう、ここまで来たんだ。



リヒトは掴んでいた黒いギターのストラップを肩にかけ、シールドを差し込んでアンプにつなぐ。


スイッチを入れてボリュームを上げると、激情が迸るような、それなのにどこか切ない音がスピーカーから飛び出してくる。



リヒトの音だ。


リヒトの音が、何百人もの観客たちの耳を貫いている。



リヒトはアンプから離れ、前を向く。


その瞬間、さらに歓声が大きくなった。