BGMがフェイドアウトしていく。


照明が消えて、真っ暗になる。


観客たちの視線がステージに集まる。



どく、どく、と鼓動が高鳴る。



次の瞬間、前方の人垣から歓声があがった。


メンバーが出てきたのだ。



最初は、スティックを持ったドラムのトーマ。


次に、ベースを抱えたハマさん。


そして、赤いストラトを肩からかけたギターのキイチくん。



「わあああっ!!」


「ディジネース!!」


「キイチー! ハマー!」


「トーマ!!」



Dizzinessのファンたちが手をあげて叫んでいる。


周りにいた他バンドのファンたちも、つられたように盛り上がる。



それから、Dizzinessの本格的なインディーズデビュー前からライブに通ってくれていた若い男の子のファンが、ひときわ大きな声で叫んだ。




「リヒトーーッ!!」



あとに続くように、リヒトの名前が連呼される。


その喝采を聞きながら、私は口許が緩むのを止められなかった。



Dizzinessのファンが、リヒトのファンが、こんなにもたくさんいる。


急遽代理で出演することになったライブに、わざわざ駆けつけてくれたファンが、こんなにもたくさんいる。