ということは、バンドメンバーではなくて………たとえば事務所の人などから、そういうことを言われたのかもしれない。


ジーンズを履きながら考えを巡らせていると、リヒトが煙草を灰皿に押しつける音がした。



「レイラ、腹へった。なんか食いもん」



ごろりとベッドに寝転がりながらリヒトが言った。


私は頷いて立ち上がった。



「酒飲みたいから、つまみがいい」


「うん、わかった」



リヒトは横たわったまま天井を仰ぎ、両腕で目許を覆っている。


そんな無防備な姿を見せるのは珍しかった。


疲れているみたいだ。

しょうがやにんにくを多目に使った、精のつく料理にしよう。



フライパンにオリーブオイルを敷いて、スライスしたにんにくを炒めていると、ふいに手許が暗くなった。



顔を上げると、リヒトがすぐ隣に立っている。


背の高いリヒトに蛍光灯の明かりが遮られていた。



「なに作ってんの?」


「チキンソテーとグリル野菜。それでいい?」


「ん………うまそう」



リヒトは身を屈めてフライパンに顔を近づけ、口許を微かに緩めた。



食事に興味を持つのも珍しい。


やっぱり何かあったんだ。