「レイラさんも確かJRでしたよね?」



ルイがにこにこしながら訊ねてきた。

唇の間から八重歯がこぼれている。



「あ、うん」


「じゃあ一緒ですね。行きましょうか」



ルイはそのまますたすたと歩き出した。


その足どりからすると、あまり酔ってはいないらしい。



急に寒さを感じて、私はコートのボタンを一番上まで留めた。



「今夜も寒いですね。レイラさん、マフラーは?」



ルイが振り向いて訊ねてくる。


本当によく気がつくなあ、と思った。



「あ、今日は忘れてきちゃって………」


「そうなんだ」



嘘だ。


本当は、今朝部屋を出るときに、マフラーを一度は手にとった。


昨夜、リヒトが巻いてくれたマフラーを。



でも、どうしてだか分からないけど、それをつける気にはどうしてもなれなくて、

私はコートだけを着て外に出た。



「風邪ひいちゃいますよ………レイラさんって、しっかりしてるようで、たまに抜けてるとこありますよね。特に自分のことになると」



ルイがのぞきこむようにして私を見下ろしている。



「なにそれ。失礼だなあ、後輩のくせに」



私はわざと怒った口調で言い、ルイの視線から逃れるように前を向いた。


駅に向かう足を速める。