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その後のことは、ぼんやりと靄がかかったように記憶が曖昧だ。
冬の夜気の中へ消えていくリヒトの背中をいつまでも目で追っていた私の隣に、ルイは黙って佇んでいた。
リヒトの姿が完全に見えなくなったとき、私はやっと我にかえって、ぼんやりとルイを見上げた。
ルイは泣きそうな顔で笑っていた。
それから、そっと私の頬に触れて、囁いた。
『冷えきってますよ………帰りましょう』
ルイはリヒトについて何も言わなかった。
私も何も話さなかった。
私たちはほとんど言葉も交わさずに駅へたどり着き、簡単な挨拶だけで別れた。
気がついたら私は自分の部屋にいて、
冷たい床の上に座り込んで、ふたつのマフラーを手にもって茫然としていた。
ワインレッドのマフラーと、淡紫のマフラー。
残酷で美しいリヒトと、優しくてあたたかいルイ。
二人の面影が私の心に入れ替わり立ち替わり浮かんで、もう、どうすればいいか分からない。
混乱した頭を抱えて、私はいつまでもそうしてうずくまっていた。