「―――レイラ」



愛しい声が、私の名を呼ぶ。


私は現実の甘い熱と過去の甘い記憶で恍惚としたまま、そっと瞼をあけた。



私を捉えて離さない美しい瞳に、ふぬけたような自分の顔がうつっている。



私の身体を覆っていた熱さが、ふいに消えた。


欲を解き放って果てたリヒトは、いつもあっけなく私から身体を離す。



ベッドの下に転がっていたティッシュのボックスをとって数枚を引き出し、それからボックスを放り投げるようにして私の胸のあたりにのせた。

使いたいなら使えば? という感じで。



リヒトは自分の快感の後始末を終えると、私には一瞥もくれずに、ライターの火を灯す。



薄暗い部屋の壁がぼんやりと明るくなった。。


濃いオレンジ色にじわりと光る煙草の先から、甘いバニラの香りの煙がゆらゆらと漂ってくる。



うすい唇にはさんだ煙草に火を灯すと、リヒトはふうっと紫煙を吐き出した。



私は身を起こし、箱から抜いたティッシュで自分の身体を拭った。



終わった後はいつも、言いようもなく惨めな気分になる。


自分がリヒトにとってただの捌け口でしかないことを実感させられるから。



べつに、特別優しくされたいわけじゃない。


でも、あまりにぞんざいに扱われて、自分が憐れに思えてくるのだ。



それでも私はリヒトの悪魔的な魅力から離れられない。