スタッフルームを出て通用口のドアを開けた瞬間、肌に突き刺さるような冷気に包まれる。


一瞬にして全身が冷えきり、震えがくる。


さむ、と呟きがもれた。



「お疲れさまです。寒いですね」



いきなりすぐ近くで声が聞こえて、私は寒さのせいではなく肩を震わせる。


驚いて声のしてきたほうに目を向けると、ルイがいた。


寒そうに肩をすくめ、両手をコートのポケットに差し込んで立っている。



「ルイ………なにしてるの?」



声を出すと、白い息が広がった。



「待ち伏せです」



にやりと笑って言ったルイの息も白い。



「一緒に帰れるかなと思って………いいですか?」


「………うん」



駄目だなんて言えるわけがない。


こんなに寒い中で待っていてくれたのだ。



「よかった」



ルイが嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。


その笑顔からぱっと目を逸らし、私は歩き出す。



風が冷たい。


首もとが寒くて、コートの襟をきっちりと合わせた。



道の両側に植えられている街路樹は、赤や緑や白の電球に彩られている。



「クリスマスですね」



ルイが斜め後ろから声をかけてきた。


私はちらりと視線を向け、「そうだね」と答える。



クリスマスイブまでは、あと三日だ。